| with you for ever. 不意に、貴方と言う『光』が見えなくなってからは、邪魔だらけの『線』の日々。 辺りは真っ暗。此処は何処だろう。 目は開いているが、目を瞑ってもその風景は大差なかった。 一面の『黒』色。もはや私は目を開けているのか閉じているのかさえ分からない。 そんな真っ暗闇の中でも、見える物があった。 『線』だった。 その線は、何故か今の私を腹立てた。 邪魔な、線。 まるで、私と貴方との距離を邪魔しているみたい。 そうか、あの人と、会えなくなったのは。 こんな邪魔な線があったからなのね。 だったら、こんな物切ってしまえ。 私の右手には、何かカッターのような物が深く握られていた。 何でそんな物が握られていたかは分からなかった。 それでも私は、深くは考えなかった。 右手に持つカッターナイフに力を加えると、そのまま『線』をなぞるように切り刻む。 最中、鋭い痛みが私を襲った。 何故だかは分からなかった。 そんな事をぼんやり考えていると、今度は『赤』い液体がポタポタ、と滴る音がした。 つまり、誰かの血液が垂れているのだ。 こんな暗闇の中に、私以外の人がいるのだろうか。 まさか、 (あの人が――……?) そんな考えが脳髄を巡り、私は咄嗟に何処へ続いているかさえも見えない暗闇の中に前進しようとした。 しかし――……また、『線』が私を邪魔させた。 一体なんなんだ、これは。 イライラする。全身に怒りが込みあがってくる。 こんな物っ、こんな物っ……!! 早くなくなってしまえ。早く、早く。私は一刻も早く、あの人の元へ行かなくてはならないのだ。 それなのにこの小癪な『線』は。 幾ら切っても切っても、その『線』が消える事はなかった。 代わりに右手に握ったカッターナイフが血で染まっていた。 線を切っているだけなのに、何故こんなに血が出るんだろう。まるで、誰かを殺しているみたい。 でも誰もいない。ここには、私しか。暗闇の中、いくら前進しても私しか見当たらなかった。 その代わり――……ぎしぎしと痛む私の、身体。 あれ、何でこんなにも痛いのだろう。 まるで私が切り刻んでいた『線』みたい。 『……別れよう、皐月。』 「―――ッ…!!!」 不意にドクン、ドクン、と呼吸が激しくなった。 覚醒されていく頭、フラッシュバックされる風景、そして、これまでのパズルのピース。 右手に握られたカッターナイフ。 切っても切っても切れない『線』。 痛む私の身体。 ポタポタと滴る血。 どこまでも続く、終わりのない闇。 貴方のいない空間。 ああ、そうか。 ここまで来て、ようやくわかった。 ここは、『闇』。貴方のいない世界。 目を開けても光が見えない。『貴方』がいないのだから。 ムカつく『線』は私自身。貴方がいなくなっても、ただ悲しむだけで何も行動に出ようとしない、憎い私。 右手に持っていたカッターナイフは美術部の活動の時、美術室から取り出したものだった、ような気がした。 其れで散々切り刻んでいた『線』と、痛む私の身体。やっと、パズルのピースが埋まった。 カッターについた血をぺロリと舐めあげる。ちょっとだけ濃い鉄の味がした。 ……だって、嫌なんだ。 私は、弱いから。あの人がいなきゃ、歩けない。 「だって、先輩。」 私は、たとえ全財産を誰かに奪われたって構わない。 何も飲まなくても、何も食べなくても、生きていける。 貴方さえ、いれば。生きていけるの、永遠に。 そんな気がするの。なぜかしら、不思議ね。 「皐月…皐月ッ………。」 遠くから声が聞こえた。 ああ、この声は、あの人の。 いつ聞いても綺麗な声ね。別れる、って言う答えを出してくれたのは彼の方。 なのに何で、まだこんなに汚い私なんかに構うのだろう。 「皐月……お願いだ、目を覚ましてくれ……。」 どうして……? 何で、そんな事を私にお願いするの? 私は、嫌。 貴方に愛されないくらいなら、この暗闇の中で死んでしまったって構わない。 「――…皐月…今更かもしれないけどね。」 すう、と静かに息を吸い込む貴方を感じて、思わず緊張した。 もう何もかも諦めている。だけど、貴方のこれからの言葉を勝手に予想して、だけど。 「僕は君の事が好きだよ。」 ……まさか、当たるなんて思わなかった。 そんな夢のような言葉、聞くなんて。 だけど、何で好きなら、 「好き……になってしまったからこそ、君と別れたかった。」 ………? 闇の向こうで静かに吐き出す彼の言葉を不思議に思いながらも、私は壁越しで聞いていた。 何故だろう……。こんなにも貴方との距離があるのに、貴方は遠い所にいるのに、近くで貴方を感じるの。不思議ね。 「最初は軽い気で付き合った。彼女なんかいなかったから。だけど、其れが本気の恋になってしまった。」 「……、」 「だからっ…だから……。皐月…目を覚ましてくれ…起きて……いつもみたいなクールな突っ込みで、僕を嘲笑って。 どうしてこんな綺麗な女振るの、って。これだから先輩はへたれなんだ、って。…そして、君さえ、よければなんだ。」 ドキドキ、と早くなる自分の鼓動が、嫌でも感じられた。 だって、先輩が私を振ったのには理由があった、なんて全然知らなかったんだもん。 それに、それに……。 「もう一度僕の『彼女』になって……?今度は間違ったりしない。大切にする、幸せにする、だから……。」 ――もう起きて?眠り姫……。 「…!」 声を出す間も無かった。 不意に唇にぶつかった、やわらかい感触。 ……見えなくたって、分かる。……先輩の、唇……。 「………〜〜〜何恥ずかしい事してるのっ!!??」 「どわっ!!?――ったたた…。」 振り上げた拳を、思い切り先輩の脳天に振り下ろす。 ……一面に広がっていた『闇』は、そこで終わった。 「馬鹿じゃない?ううん、馬鹿です!!やっぱりアンタはへたれだ。色々手順を間違いすぎ!!」 「て、手順て……。でも、眠り姫に口付けるのはやっぱり――」 「殺 し ま す よ 。」 「うわーっ!!既に血濡れのカッター装備してる!?ご、ごめんて!!ゆ、許してっ!!」 そんな風に大げさに驚く彼を見たら、 「……ふふっ。」 自然に笑いがこみ上げてきて。 制服越しでも十分分かる、血と切り傷にまみれた私の身体は痛い現実と夢の境を表していた。 それでも、もう大丈夫。 そこに『闇』はない。 「皐月、」 「……ん。」 貴方が優しく微笑んで、私にキスをしてくれた。世界は『光』に包まれた。 「…愛してるよ。」 「………あっそう。」 「皐月は?」 「…………そんな事を、聞くからへたれだって言うんだ。」 「あはは……ごめんね?」 言って微笑む貴方に、今度は私から口付けた。 貴方がいる限り、この『光』は無くならない。 貴方さえ居れば、私は生きていける。 だから、 「大好き、先輩。」 「…珍しい、皐月からそんな言葉聞くなんて…明日は大槍が――」 「殺しますよ、本気で。」 「………ごめんなさい。」 私は今一度、『光』が差し込むこの場所で、貴方との幸せを噛み締めた。 +あとがき+ こんにちは、小説更新はお久しぶりです♪里村りんです。 何だか妙に、痛い乙女モノ短編を書きたくなったので書いちゃった雑物。 恋に盲目的で危なっかしい。あまり女らしくなくて好きな人しか見えなくて 夢に現実逃避しちゃうヒロインと、とにかくへたれな相手役が書きたかったんです…。(笑) そんな思いでつらつらーと書いてしまったこの話、珍しくキャラ設定を全く練らずに書き始めた物でもあります。 なのでヒロイン(一応皐月って名前出てますが)と彼氏の先輩は名前以外殆ど設定がなかったり……あたたた。 最初は夢世界『闇』の中で皐月が『線』――つまり自分の身体を切り続けて終わる予定だったんですが、 流石にそりゃ乙女じゃねーなと言う事で色々書き足して、バッドエンドからグッドエンドになりました。(笑) そ、それにしてもこれ本当に乙女モノ…?ウチの乙女ジャンルとノーマルジャンルの分け方は一応 ヒロインが女の子で恋愛要素Or逆ハー的要素がある=乙女……なのですが(単純;) こ、これはノーマルでも十分分別できるような…。ま、まぁ、一応乙女入りって事でファイナルアンサー!! と、馬鹿話も長くなってしまいましたが;ここまで読んでくださって有難うございました!ではでは…!! 『NOVEL』ページに戻る サイトのトップに戻る |