『で、お前等はいつまでこの島にいるんだ??』
『ま、まぁ脱出できるなら今すぐ旅立ちたいんだけどさ…。』
『今丸太の船を作ろうと材料を集めてる所だ。』
『へー、丸太の船……つくんのか??』
『そりゃ、作んなきゃ出れないし……。』
あたしの言葉にクロちゃんはニヤ、と不敵に笑った。
『もう木材は集めてんだろ?』
『…?ああ、あそこにまとめて置いている。』
『なーら話は早いぜ!お前等、そこら辺できゅーけーしてろ。ここはオレサマがなんとかしてやるからさ!』
『え、え??で、でも……。』
『ちょっとトランクの中で寝すぎたし、体力も温存できたし…ここはオレサマの出番だぜ。』
そんな捨て台詞を残し、クロちゃんは去っていった。



――それが、数分前の出来事だった。




「クロちゃん、何考えてるのかなぁ……。」
「…さぁな。折角集めた木材を爆破でもさせたら……締め上げておくか……。」
「だ、ダース…それシャレになんない……。」
…とは言えクロちゃん、姿こそは猫だし…あんなちっちゃい身体で何かできるのかな…。ちょっと心配だ。
「まぁそのお陰でお前と話す機会がとれた。」
「…ん?」
「少し、話したいことがあってな。」
そう言うとダースは真剣な眼差しをあたしに向けた。
「……石のことだ。」
「…!」
ダースの言葉に、あたしは内心驚く。
……そうだ。漂流のせいですっかり忘れてたけど…フィリー先生から預かったあの石は一体……。

「俺もあの石については正直、良く分からないんだが…凄まじい魔力を持ってるのは確かだと思う。証拠付けに、あの時の嵐だ。」
「それじゃあ…あの時の嵐ってやっぱり、あの石の力で…?」
あたしの問いに、ダースは「恐らくな」と呟いた。
「嵐が起こった時、あの石から強い魔力を感じたんだ。そして、あれは普通の人間が持っていていいものじゃない…。
まぁ、直感的にそう思っただけで、確証はないが。だからフィリー先生は俺達にカルトの錬金術ギルドにあの石を保管するよう頼んだんじゃないか?」
「そんな……。」
そんなスゴイ力を持つ石、邪な心を持つ者が利用したらどうなるか。考えただけでゾッとする。
そしてその石は今、あのメノウと呼ばれた恐い人の手の内にあるなんて……。
(…どうしようっ…あたしがあの時、肌身離さず保管してれば、きっとこんなことには――。)
心に浮かぶのは自分自身への怒り。
悔やんでも、もう前には戻れない事は分かってる。だけど。だけど――。
「アシャン!」
「おわ…わ!?」
いきなりダースに名前を呼ばれて、あたしは我に返った。
目の前にはダースの顔。真剣な目であたしの肩を揺すってた。
ダース自身も咄嗟の行動だったのか、あたしが驚いた顔を見て「あ…すまない。」と控えめに呟き、続ける。
「とりあえず、後悔するのは後だ。今はこの島から脱出する事だけを考えろ。」
「ダース…。」
滅多に見ない、ダースの少し笑った顔。…っていっても、口元だけだけど。
少しだけだけど、ダースの言葉で励まされた気がした。…その時、
「ニャーーッハッハ〜!!できた!できたぞー!!おーい二人ともー!!」
「……どうやら何かできたらしいな、見に行くか?」
「うん!」



…そして。

「ふふふ…はーっははは!にゃはははっ!どーだすごいだろーオレサマの最高傑作ー!!」
「………なんだ、これは。」
「く、クロちゃん…これどーやってやったの!?」

……駆けつけるとそこには立派な木造の船があった。

「だーから言ったろ。ざいりょーさえあればできるって。」
「えと、つまるところ?」
「よーくぞ聞いてくれたなっ、ズバリ!錬金術なのだーっ!」
胸を張りながらクロちゃんがまた高々に笑う。
って………えええ!クロちゃん、錬金術つかえんの!?
ってことは……あたし…猫以下?
「…落ち込むな落ちこぼれ。ヤツはどうやら本気で高等な使い魔らしい。」
「うう、落ちこぼれって言うなァッ!!」
…とほほ、いくら元が人間だからって……猫に負けたのは本気で悔しいわ…。
まぁ、そのお陰で船も無事にできたんだけどね。







…2人と1匹で船に乗り、あたしとダースは船をこぐ。(クロちゃんは猫の姿だしね)
とは言え…現在地もわかんないし…当ても無く、だけど。
恐らく無事セヴィールに帰れる確立、0,1%…。
「…なぁクロ、お前高等使い魔なんだろ?現在地とかわからないのか?」
「なんだなんだーダース、オレサマへの挑戦かー!?高等でもできる事とできねー事はあんだよ。」
「そうか…まぁ、期待はしていなかったが。」
「んーけど直感でいくならこのまま進めば大丈夫だと思うんだけどな。」
そう、それは確証などはないクロちゃんのただの直感。
追い討ちに、「まーどっか着くことはできるだろー」などと言う無責任な言葉にダースはうな垂れた。
(まぁ、クロちゃんの言葉も一理あるっちゃあるけど…。)
もしわけわかんない島とかに上陸した時を考えるとなかなか怖い。
船をこぎながらそんな事を考えていると突然クロちゃんが「あ!」と短く叫んだ。
「おい、二人とも見てみろよ!向こうにでっけー船があるぞ!」
「え?……あ、ほんとだ!」
クロちゃんの言うとおり、あたし達が向かう方向には大きな船が見えてきた。大きさで言うと、あたし達が乗ってる船の二倍はある。
「ねねっ、ダース!近づいて色々話を聞いてみようよ!なんか知ってるかも!」
「いやしかし、海賊と言う可能性も――」
「だーっ!こんなご時世に海賊なんて早々いねーって。へーきへーき!!な、アシャン!」
「そーよそーよ♪それに、危なくなったらダースの魔法でバーン!って焼き払っちゃえばおっけー!」
「お前等な……。」
あたしとクロちゃんの発言にダースは呆れた顔をする。
それからクロちゃんを見て「そういえば、」と口を開いた。
「ずっと気になってたんだが、そもそもお前の主人は誰なんだ、クロ。」
「え…。」
「誰かの使い魔なんだろ?どうせあの船の奴等に情報を聞くならお前の主人についての情報も聞いてみようと思ってな。」
まぁ、まだ事件からそんなに経ってないし知らないと思うが。と付け足してダースが言った。
それはダースなりの優しさ。だけど……。
(……クロちゃん…?)
クロちゃんは珍しく、悲しそうな顔をしていた。
悲しい、と言うよりはなんだか苦しそうな。…どうしたんだろう…。
「――オレサマの…主人……は、」
頭を抱えながらクロちゃんが言葉を――続けようとした時だった。
「っ――!マジック・シールド!!」
「え…?」
慌てた口調でダースが魔法を唱えた。
普通魔法には詠唱がいるんだけど、ダースは初級くらいの魔法なら詠唱なしでも扱う事ができる。
だから何とか、間に合ったんだけど。
「きゃ、きゃあっ!!」
すぐ近くで爆音が響いて、あたしは慌てて耳を塞ぐ。
…何が起こったのか、いまいちわかんなかったけど。これだけははっきりしてた。
前方の船があたし達に向かって魔導砲を放ってきたんだ。それをダースが魔法の壁を創ってギリギリのところでバリアできたんだけど。
「…なんでこういう時に限って俺の勘は当たるんだ……。」
「も、もしかしてあの船って――」
「海賊か!?」
「分からない。が…俺達に敵意を向けてるのは明らかだな。」
「や、ヤバイじゃないっ!!」
「だから今考えてる!」
苛々したようにダースが叫んだ。
そんな中、向こうの船に乗ってる人達の声が微かに聞こえてきた。



「へぇ、魔法壁を創りだすなんてなかなかやるじゃない。
だけど今度はそーは行かないわよ。
『銀のスナイパー』と呼ばれた私の実力を見せてあげる!
…まぁ、魔銃は持ってこれなかったからちょっと威力半減しちゃうけどね。」
「お、お嬢様ぁ〜!やはりいけませんよ…
命令も聞かずに見ず知らずの方に攻撃だなんて…!
それに、全然関係ない人でしたらどうするんです〜!?」
「うるさいわね!ヘレンは黙って私の凄技を見てればいいのよ。
それに、見るからに怪しい奴等よ。おまけに若いし!噂通りだわ。」
「あ、あうう……お嬢様、聞いてない……。」



遠目からだからあまり見えないけれど…船に乗っているのは仁王立ちしてる偉そうな女の子と、女の子の傍でただあわあわしてるメイド服の女の子の二人だった。
見た目はなんていうか、あんまり強くはなさそうに見えるけど…さっきの魔導砲の正確さからして只者ではなさそう。
「…だ、ダース…!」
「や、やべーじゃん!ど、どーすんだよっ!?」
「仕方が無いな……船の上で、と言うのが少々危ないが…これは戦う他進む道はないようだ。」
そう言って、ダースは船の上でリーダー格の女の子を睨む。
ダースの視線に気付いたのか、女の子は「ふふん」と笑った。
「なかなか良い目してるじゃない。けど、いつまでその魔法壁が耐えていられるかしら?」
「くっ…。」
「残念だけど、上のヤツの命令により怪しい航海者は!このシアン様が葬るように――」
そう言って女の子は魔力を溜める。……が、次の瞬間。


ガンッ!!!


「……え??」
それは、予想外の音。
魔導砲でもないし、別にダースが魔法を放った訳でもない。
もしかして?そう思って女の子の方を見ると――女の子は目に涙を溜めながら頭を抑えてた。そしてその後ろには一人の少年がいて、女の子をグーで殴ってた。
「い、いったぁ〜い……。」
「あ、あわわわっ、お嬢様ぁ〜〜っ。」
「痛いじゃなぁい!女の子にはもっと優しくしなさい!!」
「それが失態をしでかした奴の台詞かよっ!つーか謝れ。良く物事考えず勝手に魔導砲放ちやがってー!」
「うるさいうるさーい!!私は!大総統の娘なのよっ!!」
「『元』だろ?それに、今お前がフツーに暮らしていられるのもオレの人徳があってのお陰だと思うんだけどなぁ〜??」
「う〜〜……!そ、そんなに…怒らなくてもいいじゃないのよぉ……。」

赤髪の男の子の剣幕に、お嬢様と呼ばれていた女の子の顔がうるっ、と潤む。
…い、いったい何が起こってるのか分からない。
あたし達が呆気に取られてると突然、赤髪の男の子があたし達に目を向けた。
「部下が失礼な事してゴメンな。ちょっと話を聞きたいから、こっちの船に来てほしいんだけどいいか??」
「え、え??あの……。」
「あ、別にコイツと違って悪いようにはしないから安心してくれよ。」
そう言って男の子は女の子を睨んだ。女の子は「う〜〜。」と唸った後渋々あたし達に視線を向け、
「…悪かったわね、どうやら私の勘違いだったみたいだわ。
…でも!あんた達が怪しい航海者だってのは紛れも無い事実よっ!
そこんとこ、このシアン様に事情をしっかり話しなさいっ。」
「あーもう、シアンは偉そうなんだからなー。」
シアンと呼ばれた女の子を傍目に男の子は苦笑する。
それからあたし達にまた視線を移し、

「自己紹介が遅れたな。オレの名前はランパード・アッシュ!オレ達にお前らの知ってる情報を教えて欲しいんだっ。」
ランパードと名乗った小さな少年は炎のような紅い瞳を輝かせて笑った。





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あとがき。
リメイク前でお馴染み、ランパの登場です〜♪出会い方がリメイク前と全然違います…。
そしてシアンとヘレンについてはボツとなった作品のキャラだったり(笑
アレです。キャラの生み捨てイクナイ!と言う事でボツキャラはサブでどんどん出そうという魂胆――(゜д(#○===(゜д゜*)O