チュンチュン……
「ん……?」
耳に届く、鳥の声。
朦朧とした意識。起きたばかりの頭は不思議なくらい全然回転しない。
「…ん〜〜……っ…。ねむぅ……。」
目を擦りながら、のんびりベッドから起き上がる。
…さっきのおばあちゃんとの思い出、あたしの夢だったんだ。
(やっぱり…おばあちゃんの事忘れられないみたい。)
大好きだったおばあちゃん。
あたしが錬金術士を目指すきっかけとなった尊敬できる人物。
あの日から幼いあたしは錬金術士になろう、って心に誓ったんだ。
おばあちゃんは、あたしが10歳になる頃にはもう歳で死んじゃったんだけど。
…不意に、胸元に下げているペンダントが目に入った。
さっきの夢にも出てきた、おばあちゃんからもらったペンダント。
おばあちゃんがいなくなった今、これだけがおばあちゃんの形見。
だからあたしはいつも、おばあちゃんとの思い出、そして、あの約束を忘れないように首から下げている。
――…今でも、夢を見ている。
(いつか、おばあちゃんのようにあたしも人を助けてあげるんだ。)
そんな子供のように直向きで、実にオーソドックスな、夢を。
「……あれ?」
かれこれ思い出しながら約10分。不意に違和感を覚えた。
起きた時からずーっとあたしの時計…動いてないような?
「………ま、さか…。」
サァァァと顔から血の気が引いていく。
あたしの予感は見事的中した。
「やー!!!ち、遅刻だ〜〜っ!!!??」
寮の窓から見える学園都市の大時計を見ながら、あたしは絶叫した。
いつもの登校時間より、20分程遅い。
ちなみにいつもの登校時間だって結構ギリギリで、走らないと間に合わなくなる程だ。
となれば、あたしの遅刻は確定してしまう訳で。
「ふぉいふぇふぉいふぇふぉいふぇぇええっ!!」
食パンを咥えながら全力疾走で駆け出す。食パンを咥えながら叫ぶと、何を言ってるんだかいまいち分からない。
勿論、今時朝っぱらから食パンを咥えながら全力疾走してる年頃の女の子だって珍しい訳で、
道行く人みんながあたしを見ていく。
(は、はずかしーっ!!!)
顔が真っ赤になっていくのがわかる。
だけどあたしは止まらない。
今日遅刻したら今週三日目の遅刻になり、1日欠席扱いされちゃうもの!
「おー。またお前かアシャン。」
「ひえええっ!!シアせんせぇー!!まって!門閉めちゃダメー!!」
全力で頑張って走り、ようやく校舎が見えてきた…と安心するのも束の間。
学園の門限担当の体術教師、フローシア・リスタール先生があたしの前に立ちふさがった。
フローシア先生…通称シア先生は元々あたしの通ってる魔術・錬金術科専攻の先生ではないんだけれど、
あたしがこの学園の遅刻常習犯の一人なので、すっかり顔を名前を覚えられてしまった。
「あと5秒で閉門するぜー。」
「ま、まてえええぇっ!!!」
「お?」
シア先生の「あと5秒」と言う言葉に、あたしはこれ以上出ない、ってくらいのパワーを
出して門に向かって駆け出した。
あたしの咄嗟の行動に流石のシア先生もビックリしたみたいで、目を大きくさせてあたしを凝視していた。
「どりゃああっ!!!」
と、叫ぶと同時に勢いをつけて飛び上がる。
……ふふん。頭の方は自信ないけど、これでも体術の授業だけは朝飯前だからねっ!
「やったーっ!突破成功ぉっ☆」
「あー!くそっ。お前が体力バカなことすっかり忘れてたぜっ!」
「体力バカで悪かったですねーっ!」
「……ほんっと錬金術士に向いてないよお前。
な、武術の道に歩みなおさねーか??お前ならいけると思うぜ。」
「折角のお誘いだけど、あたしは錬金術士以外の将来なんてアウトオブ眼中でっす!」
あたしの言葉にシア先生は「もったいねー。」と苦笑した。
まぁ確かに一時期武術方面の職業について大暴れ…とかも考えた時もあったけど。
やっぱりあたしの夢は、おばあちゃんみたいな錬金術士。それだけだから。
「っと!こんなとこで話しこんでる場合じゃない〜!じゃあね先生っ!!」
「ああ。……あ、そうそうアシャン。」
「はい??」
一言言葉を交わし、クラスへ急ごうとすると珍しくシア先生があたしを呼び止めた。
シア先生があたしを呼び止めることなんて珍しい。なんだろう?と思い、言葉を待つと。
「どうでも良いけどスカートで派手なアクションはやめとけ。パンツ見えてたぜ。」
「………〜〜〜〜っ!!!???」
「はははっ♪んじゃ1日頑張れよー。」
……なるほど。道理で凝視してた訳だ。
って、自分で納得してどーすんのよー!!いやぁあ!あたしお嫁にいけないー!!!
「………はぁ〜〜…。」
思わず、大きく溜め息を吐く。
……と同時に聞こえてきたチャイム。やばやば!過ぎたことをくよくよしてもしょーがない!
(先生来る前に駆け込まなきゃっ!!)
それだけ心の中で呟くと、あたしはまた駆け出す。
慌しい、朝の一コマ。そんなのはあたしにとっちゃ日常茶飯事だった。
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