あっという間に、乗船日はやってきた。
寮で荷物を確認する。昨日の内に用意したけど…忘れ物はないかしら??
えっと、着替えOKー、クマさんOKー……。
「なんでクマなんだよっ!!」
「わ!?ちょ…ダース!?」
あたしが荷物を点検してると、いきなり背後で声がした。
「レディの部屋に勝手に入んないでよっ!!」
「お前の準備が遅すぎるから見に来たんだっ。大体鍵掛けてないのが悪い。」
うぐぐ、ムカつく言葉ね……!!
大体ノックとかするでしょ普通っ!!
「何でクマが必要なんだ、全く……。」
「だってクマさん可愛いじゃなーい。」
「……あのな、遊びに行くんじゃないんだぞ?」
「何よ、分かってるもん。」
「じゃあなんだこの荷物はっ!?」
あたしの言葉に、ダースは再び叫ぶように言う。
指差す先には、色んなファンシーグッズ。
「……乙女には乙女の事情があるのよっ。」
「………、話にならないな。」
誤魔化す為の嘘を考えたが、まともなのが出てこず…
結局そんな言い訳をしたが、言った所で呆れられてしまった。
…それにしても何か今日のダース、いつもより気が立ってるなぁ。
そんなに行くのが嫌なのかしら。
「何でダース行きたがらないの?」
「……は?」
「船。」
「…………、」
あたしの言葉に、ダースは黙り込んでしまった。
それから「別に、たいした事はない。」なんて、小さく呟いた。
「ほら、外でプラチナも待ってるから行くぞ。次の馬車に乗ってナクストゥールまで行く。」
「え、馬車??お金は??」
「先生から資金が出てる。心配するな。」
「あ、なーんだ。良かった〜。」
お金まで払ってくれるなんて、先生ったら気前いいっ!
まぁ依頼したんだから、それくらい当たり前と言えば当たり前なのかな。




「うーわぁ!ナクストゥールって綺ー麗−!!」
「馬鹿、煩いぞ田舎者っ。」
「ま、まぁまぁダース。」

――で、馬車に乗ってあっという間に港町ナクストゥール。

ナクストゥールは交易とかが盛んな港町だ。
近くの都市とかで港があるって言ったらナクストゥール。
そんな訳だから、この街には日々旅行客が行き交っている。
「…そろそろ船の出航の時間ですね。」
見送りのフィリー先生が静かに呟く。
時間的にギリギリだった為あまりナクストゥールを見て回れなかったのが心残りかなぁ。
「まぁまぁアシャン、帰ってきたらゆっくり見よう?」
「うん、そだね。」
微笑むプラチナの言葉に頷くと、あたし達はフィリー先生に向き合った。
「じゃあそろそろあたし達行ってきます!」
「ええ――…行ってらっしゃい。どうか、気をつけて。」
「安心してください、この落ちこぼれは俺が責任持って見ますので。」
「こらぁダース!あたしを子ども扱いしないでよー!!」
「煩い。ほら、さっさと行くぞ。」
「わ、引っ張らないでってば〜!」
ダースに引っ張られながら、ナクストゥールを後にするこの船へと乗り込んだ。

(…少しの間、寂しいけど……。)


――行ってきます、隣の大陸の魔法都市カルトへ!






……なんて意気込んでから暫く。




「うわぁ………!!」
甲板に出て、心地よい風を受ける。
海はどこまでも青くて、ナクストゥールは大分見えなくなっていた。
「すごーい!あたし船なんて初めて乗ったよ!」
「ふふ、僕もこんなに大きいのは初めて。………それにしても…、」
あたしもプラチナも、隣に居るダースに視線を移す。
「…大丈夫?ダース……。」
「う、うぇっぷ……。」
「こんなに船に弱いなんて……。」
「な、何言ってるんだ。そんな訳――……おぇ……。」
「だ、ダース…無理しなくていいのよ??あ、ほら位置が悪いんじゃないかしら!部屋で休んだら…??」
「…ごほっごほっ……。落ちこぼれに心配されるなんて……俺も落ちたものだな……。
 あぁ……世界がぐるぐる回ってるな……。」
訳の分からないことを言いながら、手すりにぐったりもたれる。
いつもクールでインテリぶったダース。
そんなダースのこんな所は、あたしもプラチナも初めて見た。
だからいつもムカつくダースだけど妙にかわいそうになってそう言う言葉をかけると、
すぐ大丈夫だ、と気を張って言い返す。…ぶっちゃけ、全然大丈夫じゃなさそうなのに…。
「あ、あたしそういえばフィリー先生から酔い止めのお薬貰ってたんだ!
 部屋においてたから取って来るねっ!」
「あ、アシャンよろしく……!」
「おえ……っ…余計なことはしなくて――……!!」
「い、いってくるねー……。」

止めようとするダースをあくまで振り切り、部屋を目指す。
ダースがここまで船に弱いなんて…。
(ようやく今まで断固として拒否してたダースの心情が分かったわ…。)
思わず苦笑。…何か無理に連れてきちゃって可哀想だったかな、なんて今更になって思う。
そんな事を考えているとあっという間に部屋につく。
鍵を開け、ドアを開ける。
(……あった。)
部屋の入ってすぐの所に、酔い止めは置いてあった。
「これと…あと苦しそうだったからお水もってってあげよ。…んっと、後何かもって行くものあるかな…。
 …あ、そうだ!売店やってたからお財布持っていこうっと!」
部屋に荷物は置いている為、そんな余計なことばかりを考えてしまう。
いけないいけない、酔い止めの薬を取りに来るだけだったのに予想以上に時間を食っちゃった。
「早く戻らないとダースが大変な事になっちゃいそうっ!」
焦りながら部屋を出る。――…と。
「きゃっ……!?っと、ごめんなさい…!!」
案の定他のお客さんにぶつかってしまい、慌てて謝る。
うわぁ、やっちゃった……!名前とか聞かれたらどうしよ…!あたしのせいでアカデミーの恥にでもなったりしたら!?
……あわわわ、ど、ど、どうしよ………。
「おや、大丈夫ですか?」
「あ、あたしは平気です……す、すみません余所見してて――…。」
そこまで言い掛けた所で止まった。
…う、うわぁ…凄い綺麗な人。
ぶつかった相手は凄く綺麗な金髪の男の人だった。
男の人はにっこりと笑うとあたしに手を差し伸べてくれた。
「あまり慌てて走らない方が良いよ。」
「あわわ……き、気をつけます……。」
「ふふ、でもただ転んだだけみたいで良かった。怪我でもしたらどうしようかと。」
「あ、あたしなら大丈夫です!こう見えても結構頑丈ですから。」
「あはは、それなら良かった。…じゃあ僕はこの辺で。」
最後に笑みを浮かべると、金髪の男の人はあたしから遠ざかっていった。
………なんか、綺麗な男の人だったなぁ…。
「………あ。」
そういえば…名前聞くの忘れちゃったや。
うーん、でもまぁいっか、あたしも相手もただの乗船客。交流ないと思うし……。
「あ、アシャン、こんな所にいたの?」
「……あ。」
不意にプラチナの声が聞こえて前を向くと、そこには慌てた様子のプラチナが。
「良かった…ダースがね、大変なんだよ。一刻も早く酔い止め飲ませないと大変なことにっ!!」
「え!そんなにヤバイの!?」
「時は一刻を争うよ!」
うわぁ、ダースってば本当にすっごい弱いんだなぁ……。早く薬飲ませてあげなきゃ…。
「それよりアシャン、さっき誰かと話してたみたいだけど……。」
「あ……見てたの?」
「遠目からね。知り合い??」
「ううん。初めて会った人だよ。あたしが案の定ぶつかっちゃってさ〜……。」
「あはは、アシャンらしいね。」
苦笑するあたしの言葉に、プラチナが釣られて笑う。
そんな会話をしていたから、だろうか。


(……まさか…?)


「…?プラチナ??」
「…あ、ううん、なんでもない。早く行こう?」
「え、あ…うん!」
プラチナが一瞬だけ見せた真剣なまなざしの理由が、あたしには良く分からなかった。


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あとがき。
という事でようやく船に乗り込みました。…すぐ終わりますが…。(笑
今後の展開は…もしかすると、旧作からお世話になっている人だったら読まれるやも…(笑笑
そしてダース…旧作の頃は本当『クールキャラ』と言う設定があったのに何時の間にこんな……!(お前の所為だ