| ――大体俺だって好きで勇者をやってる訳じゃない。 険しい山道を歩きながら青年は心の中で叫んだ。 ――そうだ。好きでこんな険しい道を進んでいる訳じゃない。 勇者だの英雄だの好き放題言われて強制的に村から追い出されただけであって、 別に勇者としての才は無い筈なんだ。 (大体何なんだ、辺境の魔王如きでこんなに騒ぎやがって。何もしてこないなら別に良いだろ。面倒くせぇ…。) 辺境の魔王…。 代々魔王の家柄で育った現魔王。 村人によれば最近その魔王が復活したらしい。 …が、青年は「どーでも良い」と思う。だって、復活したのに町を襲ったりも何もしてこないのだから。 それなのに… 「何故俺がロッククライミングしなければいけないんだ!!!」 一生懸命山道を登っていたらおっこちそうになって、今に至る。 気分的には「ファイトー!!いっぱーつ!!!」と叫びたい。が、多分叫んだら落ちるかな。 「だ…誰か助けろよ……。」 崖から落ちそうになっている美青年はその顔に不似合いの言葉を吐いた。 …なかなか情けない。 「……?」 呟く青年の目の前を、騒がしい連中が通り過ぎた。 一人はまだ幼い銀色の髪の少年、もう一人は気味の悪いくらいにこにこ笑っている青年、 そして…… 「ねぇカナン。その『辺境の魔王』って言うのは何処に居るの?」 「えぇと、確か噂ではこの辺りだったんですが……。」 「本当かよー?全然見当たらないぜ。」 「………!!」 桃色の髪に、薄い紫の瞳を煌かせる美少女。 …か、可愛い……。 無愛想な美青年は顔に不似合いの台詞を不意にも心の中で思ってしまった。 そんな美少女を見ていると自分がピンチに至っていると言う事など忘れてしまいそうで、 だから…つい叫んでしまった。 「ファイトぉぉぉ!!!いっぱーーーつ!!!!」 #03,邪道勇者登場。 「っ!?」 無表情で叫びながら崖をよじ登る。それはまるでゴキ○リの様だった。 目の前には美少女。…と愉快な仲間達。 「な、なんだぁこいつ…?」 「あはは、なかなか変わった人ですね。何かのCM撮影でしょうか。」 カナンは心底面白そうに笑った。 何故この世界に『CM』が存在しているのかも君と僕だけの秘密だ! 「で、あなたは誰??」 桃色の髪の少女が人の良さそうな顔で青年に訊ねた。 人見知りのしない様子は青年的にかなり好感を持てる。 ……って、見惚れている場合でもない。 ゴ○ブリのような格好悪い所を見せてしまったのだ。挨拶でイメージアップせねば! 青年は「ふ」と男らしい(?)笑みを見せた。何故かバックにはキラキラ星マークが多数。今にも歯が「キラン」と光りだしそうな雰囲気だ。 「――俺はエクス。…勇者だ。」 「勇者……?」 格好良く決めてみた。ふ、どうだ!そこの野郎二人に負けず劣らず美形だろう!とか心の中で思ってみる。 しかし、現実はそう上手くはいかないものである。 「なんつーかさー、勇者っつーよりお笑い芸人?だよなー!」 「あはは、きっと将来大スターになれますよ、エクスさん!」 「だーっ!!うれしくねぇーー!!!」 あまりの嫌味にエクスは格好付けるどころかついに地を出してしまう。 い、イメージダウンしたか!?とエクスは心配に思ったが、幸いにも少女は動じていない。 …こうなればどんどんアピールするが勝ちだ! 一目惚れと言うのはおっそろしい。何処までも策を考えてしまうのだから。 「お前等は、わざわざこんな山道までどうしたんだ?――の前に、貴女のお名前は?」 ティアだけを見てエクスは訊ねた。…後の二人の視線がどこか痛かったような気がするが気のせいにしておく。 「私はティア・エルデスティラ!一応王女――あ!このことは内緒よ?私達は魔王に会いに行くの!」 「魔王に…?何故だ?」 「私の王子様を助けに行くの♪」 「………王子様!?」 ………ガーン!!! 『私の王子様』 ティアの一言は、さらにはエクスの心にまで響いた。 この俺と言うものがありながら『王子様』がいるだと!?何処のどいつだ、出てきやがれ!!とエクスは心の中で叫ぶ。 ショックを受けるエクスを見て…ティアのお付の片割れ(多分従者だろう)の目がキラリと光ったのは…気のせいだろうか。 「まぁそんな訳なので、私達はこの辺で失礼しますね。まぁ二度と会うこともないでしょうけど。」 「そーそー。んじゃ早くいこーぜティア!」 「そうね、じゃあねエクス!ばいばーい♪」 「ま、待てお前ら!!初登場の俺をそれで片付ける気か!?」 …そうだ、ここで出番を終わらされて溜まるか!! エクスは心の中で拳を握るとそそくさと背を向ける三人衆を慌てて呼び止めた。 「俺は勇者だ。魔王の住む祠くらい知っているが?」 「え!本当!?」 「…げ。その手があったか…。」 「――チッ。大人しく退場すればいいものを…。」 目を輝かせて振り返るティアと、いやそーな顔をした黒服の美少年。 …そして普段人の良さそうな笑顔が印象的な青年は小さく舌打ちしていたような気がするが、 やはり気のせいだろう。気のせいにしておいてください。 「ねぇエクス!お願い、私達をそこまで案内して頂戴!!」 「ああ、最初からそのつもりだったさ。俺は勇者だからな、魔王退治も頼まれている身なのさ。」 なんとも白々しい言い分だ、とお付二人は心底そう思う。 ロッククライミング時は魔王退治をあんなに嫌がっていたというのに。 「じゃあ早速行きましょう!あ、こっちの笑顔が印象的なのがカナンで…十字架のペンダントの方がセリシア!」 「ああ、適当に宜しく。」 「…一応、宜しく……。」 「あはは、仕方が無いから宜しくしてあげますよ。運良くティア様のお友達になられたそうですし。」 むすーと脹れながらセリシア、やはり微笑みながらカナンは慇懃無礼。 挨拶を終えた三人の間でバチバチ……と火花が散っていたが、ティアはお約束のごとく気づいていなかった。 「ところでティア様?」 「何?カナン。」 カナンはエクスに見せたダークな笑みとは別人かのような100%な笑顔でティアに訊ねた。 「王子様と言ってもどうやって探すんです?外見は特に言われてませんし…。」 「そーだよな…。…まさかお前『あなたが私の王子様ねっ!?』とか見ず知らずの赤の他人に言い寄る訳じゃねーだろうな…。」 「そんな幼稚な事しないわよ!」 いや、あなたはいつも幼稚だと思うのですが。と言う突っ込みもなしの方向で。 エクスは、と言うと……「流石姫…。」等と、意味のわからない事を一人呟いていた。 「こんな事もあろうかとお父様に貰った探知機〜♪」 「へー、お前の父さん…じゃないや、国王へーかってそんな物まで持ってたのか?」 「詳しくは貰った…かな。ほら、有名な魔導工学者のニコラス・ルナティックさんから貰った奴を私にくれたのよ。」 「ニコラスって言うと…アレか。怪しいおっさん。」 等と会話をしながら、ティアは小さな鞄から何か…アヒルを取り出した。 …アヒル。黄色くて、風呂に浮かべるサイズの人形で…。 「……ティア、様。これはいったい…。」 「『がーちゃん探知機』だって。目的地や人に近づくと何か音が鳴るみたい。」 「………へぇ。」 皆、何故アヒルなんだろう。とはあえて突っ込みはしなかった。…一生分かりそうになかったから。 同時に、『どういう風に鳴くんだろう。』と気になりもした。 途端――。 『ガーチャンガーチャンアヒルノガーチャン、サガシテイルヤツガチカクニイルゼ!』 「ぶっ!!!」 アヒルの人形が鳴き出した途端、その場に居た全員が思わず吹き出した。 …え?何だって?「がーちゃんがーちゃん、アヒルのがーちゃん、探している奴が近くにいるぜ!』? 可愛らしい顔とは裏腹に、なんとも男らしいアヒルである。 ――じゃなくて! 「がーちゃんが反応してるってことは…この近く!?」 「だな。…そこ。」 短くそう言うと、エクスは近くの洞穴を指差した。 「確かそこが魔王の待つ祠だ。」 「…ちょっと待てよ。何だよあの狭い穴。」 「気にするな。所詮邪道だ。」 「何を言っているかは分かりませんが…これ以上ティア様に悪い虫がついては困りますっ、 さっさと行って王子を退治しに行きましょう!」 いやいや、カナンさんそりゃ違いますよ。と男二人は言いたかったが言えなかった。 …どうやらカナンにとってはティアに近づく男全てが『敵』のようで。 「…あそこに王子様が居るのね……よーし待ってて王子様!今助けに行くから!!」 「あ!!ティア様、待ってください!!」 カナンが止める間もなく、ティアは祠へと走っていった。 もうすぐ王子様に会えるんだ、という淡い期待を抱きながら。 +あとがき+ 本当、カナンは何処までドス黒いのでしょう…。(笑 邪道勇者さまエクスが登場したのに実はこの話、予定では次回かその次くらいに終わりますよ(笑 エクス「何!?俺の陰がいくらなんでも薄すぎるぞ!?」 ごめんなさいエクス。君のキャラは元々そう言う設定なので…(待。 さぁ次はいよいよ王子様に…会える……のか……?(オイ |
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