王子様、王子様、何処に居るの――?


ティアは急ぎ足で祠の中を駆け抜けた。
何故だか今王子様を見つけないと、一生会えないような気がして怖かった。

その時、近くで人影が見えた。
「まさか…王子様……!?」
「うん??」
「…あっ……!」
にっこり微笑みながらティアの問いに答えるかのように、少年は振り返った。
綺麗な水色の髪。黒いフードを着ている為見難いが、よくよく見るとかなりの美少年。
これが…これが私が探していた王子様ね――!?とティアが心躍らせるのもそれまでだった。
「ここに来たって事は…なんだい?僕に御用があって来たのかな?お嬢さん。」
「え……??じゃ、じゃあまさか……。」
「ティアぁーっ!!」
ティアが言い掛けた所で高い声が響いた。…セリシアに続き、カナン、エクスがティアに追いついた。
ティアを見つけ、安堵の表情を浮かべるのも束の間。直ぐに少年を見つけると皆真剣な表情に変わった。
「ティア?じゃあ君がエルデスティラ国の王女なのかい?」
「そ、そうだけど……貴方は……。」
「ああ、忘れてたね♪僕はルスコ。ずっと『魔王』って呼ばれ続けてたからこれが果たして本名かどうかは知らないけど…。
多分これが、僕の名前かな。」


#04,『王子様』の正体




…………ガーン!!!!

そ、そんな…やっと綺麗な人に会えたからこれが私の王子様だって思ったのに……。
王子様じゃなくて魔王だったなんて――!!ティアは心の中で叫ぶ。
ルスコ、と名乗った『魔王』はそんなティアの百面相を楽しんでいた。
「やっと見つけたぜ魔王!お前さえ倒せば俺は宿命から逃れられる。」
「…?君が今回の勇者かい?…おっと、剣を向けないでくれるかな?」
『魔王』を見つけるなり素早く剣を抜き出すエクスに、ルスコは余裕そうに笑った。
…流石勇者と魔王。どの作品でもこの二組は仲が悪い物なのだろうか。二人の間で火花が散っているように見える。
「何でも良いですが、そろそろティア様を返していただきましょうか。」
「そーだそーだっ!」
エクスに続き、カナンは魔法詠唱準備態勢を取り、セリシアは聖典を取り出した。
突然戦闘かよ、という突っ込みはなしの方向で。だって目の前のこいつは一応魔王なんだから。
もっとも、魔王ではなくてもカナンの中で『ティアに近づく男』=敵なので、いずれ戦う事にはなっていたんだろうが。
「おやおや…随分とせっかちなお客さんだ。僕は何もしてないのにね?ティア♪」
「「「馴れ馴れしくティア(様)を呼び捨てにするな(しないでください)っ!!!」」」
微笑みながらティアに問いかけるルスコに向かって男三人は叫ぶ。普段気が合わない三人なのに見事にハモっている。
いや、それを言うならエクスとセリシアもだろう。と言う突っ込みは誰も入れなかった。
危うく戦意喪失するところだった三人だが、武器を構えなおすと魔王を睨んだ。
――途端。

『ガーチャンガーチャンアヒルノガーチャン、サガシテイルヤツガココニイルゼ!』
「「「…え。。。」」」

くわっ!くわっ!!と泣きながらがーちゃん探知機が激しく反応した。
激しく泣き喚くがーちゃん探知機ははっきり言って煩いこの上ない。…まぁそれは置いといて。
そんながーちゃん探知機が魔王、ルスコに向かって泣いているという事はまさか。
…まさか…まさか、まさか……??
「あなたが私の王子様―――っ!?」
「「「えぇぇぇぇええええ!?」

「ん、そうかもね♪」
…おいおい、マジかよ。ぽかーんと口を開けながら男三人。
この人が…この人が私の王子様だったんだ!!少しばかり驚くティア。
「まぁ予言だから僕はわからないけれど…本当にティアの『王子様』なら光栄だね♪」
「ちょっ…待てよ!!大体お前魔王だろ!?お前がティアの『王子様』なんてありえない!!」
「そうですよ!!ティア様は私のティア様なんですから!!」
「さり気に何言ってやがる従者!!お前なんか姫の従者でしかないだろ!!」
少々脱線しつつある男どもの言い争いが再び始まる。
殺気プンプンな男三人を見てルスコは苦笑すると、
「やだなぁ、今時魔王なんて居る訳ないしょ?」
「……は??」
「確かに僕は『魔王』の宿命を持ってるけど…町とか壊す気はないし、そんな力もう殆ど残ってないんだよね。」
まぁ簡単に言えば『勇者』の宿命を持っている君と同じかな♪とエクスを見ながら付け足した。
「じゃあっ…!」
「うん?勿論町を壊さなければ魔物だって呼ぶ気はないよ?」
「わぁーっ!じゃあ貴方が私の王子様なのねっ!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!!」
キラキラと目を輝かせるティアとにっこり微笑むルスコの間にカナンが必死な顔で割り込む。
「私は認めませんよっ!?こんな素性の知れない男がティア様の王子様だなんてっ!!」
「あら、どうして?」
「当たり前でしょうっ!?もしこの男が金銭やティア様の体しか見てない男だったらどうするんですっ!?
嗚呼、そうなってしまえばティア様があんな事やこんな事……!このカナン、そんな事耐えられませんっ!!」
カナンは頭を押えると狂ったように叫んだ。此処まで来たらもう必死だ。何が何でもティア様を説得しなければ、と。
しかしティアは「大丈夫よー♪」なんてにっこり微笑む。
「綺麗な水色の髪…紅の瞳……。真っ黒いローブのせいであまり目立たないけれど、なかなかの美形だと思うのっ!」
「ははっ、気に入ってもらえて嬉しいよ♪」
「ちょ、ちょっと待てよぉー!!『紅の瞳』ならオレも当てはまるだろ!?」
運良くルスコと同じ色の瞳を持つセリシアがずいっと前に出て自分の目玉をアピールする。が、
「何言ってるのよセリシア!王子様の瞳の方が格好良いわっ♪

――ガァァァァン!!

「あらっ、セリシア?どうしたの!?」
ティアによって痛恨の一撃を与えられたセリシアは戦闘不能状態になりぶっ倒れた。…頑張れ、少年。
「まぁこのガキは放っておく事にして…。いくら姫がそいつを気に入ろうと、国王が許さないと思うが?」
「うっ……でもこの人が私の王子様だもんっ!許してもらえないその時は愛の逃避行しちゃうんだから!」
「わっ、お、落ち着いてくださいティア様!!愛の逃避行だなんてっ、そんな男やめて私としましょう!!」
いや、そう言う問題でもないだろう…!
「とにかく、とりあえずルスコ様を城に連れていって、それからだと思うの。」
「ティアっ!そんな奴『様』付けしなくて良いっ!」
いつの間に復活したのか…。セリシアは根性で立ち上がるとティアに向かって叫ぶが、勿論効果なし。
「ねっ、私の家に来ない??貴方みたいな美少年がこんな薄暗い洞穴にいつまでも居るのは良くないと思うの!」
「う〜ん、そうだね。もうそろそろ此処にも飽きたし…。行ってみようかな♪」
「やったぁっ!決まりね☆」
「「「ちょっと待てっ!!!」」」
男三人はまたも叫ぶが、効果覿面。しかも何だか手まで組んじゃっている始末。
――…嘘だ。
ティアがこんな男と……!

「「「嘘だぁぁぁぁぁああああ!!!!」」」

…そだぁぁ……!
…だぁぁぁ……!
…ぁぁぁ……!
…ぁぁ……!
…ぁ………!


薄暗い洞穴の中で、男三人の叫び声がこだましたと言う。



+あとがき+
次のお話でようやく完結です!『ようやく』って、かなり短いですが…(死
あ、誤解がないように言っておきますが『ルスコ×ティア』って訳ではないんです。(笑)
ただティアがルスコに一目惚れして、ルスコの方もティアに少し興味があるだけで。男三人にもまだ希望はあるぞ…!(待
それにしても自分はシリアスより、こういうハイテンションギャグは書きやすい事が判明(笑)
 
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