| *Side-Kika&Tika 二条稀華 千華を傷つけるものなら、殺してやる。 見慣れない道を、ただ独り歩く。 それはやはり、誰でも不安を覚えるものだろう。 (こんな状況でも、いつもみたいに冷静でいられると思っていたのに。) どこか、焦っている自分がいる。 其れは、殺し合いを命じられた恐怖もあり、 何より、 (千華――…くそっ、どこなんだ……!) 何よりも大切な兄が、今どこで何をしているか分からない、絶望的な不安もあった。 これで、千華を見つけた時には既に誰かに襲われた後だったりしたら。 (俺は…一生、俺を許せないだろうな。) 等と、自嘲してみる。 しかしそんな事をしたところで千華が見つかる筈も無く。 「千華ッ………。」 不安になって、思わず呟いた。 そして呟いた後で、気づいた。 (誰か、他の参加者に見つかりでもしたら?) それは、かなり面倒なことになる。 それでも、一番怖かったのは。 (…どうして……俺、馬鹿やってるんだ。) 思考力が、かなり低下してる。 何故だろう。これでも成績は千華より上だ。考える事だけは得意なのに。 (どうして……こんなに取り乱しているんだ。) 気がつけば、息切れしながら走っていた。 それほど、急いで走っていたのだろうか、自分は。 疲れるのを気づかないほどにまで。 「……千華…。」 気がつけば、また声が漏れていた。 声に出てくるのは、あいつの名前ばかり。 「千華……。」 お前はいつの間に。 「こんなにも…俺の中で存在が大きくなってたんだ……?」 こんなことに巻き込まれていなかったあの時までは、こんな事考えた事なかった。 千華の事を護るのが、俺と言う人間の存在理由だったから。 だけど、いざ離れてみると、こんなにも怖いんだ。 お前がいない、というだけなのに。 「―――千華ッ…。」 「……き…か……なの?」 「え……っ」 不意に、弱弱しい声が聞こえた。 其れは、紛れも無く。 「……千華!」 「稀華……!よか、った……。」 たった一人の、兄のものだった。 ただ……千華は、いつもより顔色が悪かった。 健康な所だけが取り得の千華とは思えないほど顔が蒼い。 「…何か、あったのか?」 恐る恐る、そう訊ねる。 服装や顔などを見るが、傷らしいところや血は無い。 まだ誰にも襲われていないという事がわかり、思わず安堵した。 「……あのね…僕、見た。」 「…何をだ?」 「ゲームに……乗った子…。」 小さな声でポツリ、ポツリと語る千華を見て、俺は沈黙した。 「怖くて僕…一部しか見てなかったけど…スタート前にいた、 黒髪の子…眼鏡かけてない子の方が…ナイフを、振りかざしていて…。」 「………。」 ゲームスタート前にいた、黒髪の少年。 名前は知らないが、一発で誰なのかが分かった。 ……あの雰囲気からして、何となくそんな予感はしていたが。 「それで…襲われた方の生死はわからないんだな?」 「……うん。僕…見つかったらやばいな、って思って…逃げてきたから……でも…。」 俯きながら、うっすらと涙を浮かべて言いにくそうに千華は続けた。 「僕…見捨てた事になるんだよね。」 「……千華…」 「ほんとはね、僕…こんな殺し合いなんてゲーム、嫌だよ。出来ることなら、止めたい。 ……今は無理でも、参加者の子がみんな協力すれば、脱出できるかもしれないよ? だけど…襲われたら、どうしようって言う不安が……あるの。」 弱弱しい声で、凄く綺麗な事を言った。 千華を傷つけるものなら、殺してやる。 そう、心の中でずっと思い続けてきた自分とは、大違いだ。 まったく、汚れの無い。 「……千華、酷い事言うかもしれないけどな。」 「……うん。」 「この殺し合いゲームで、何より大切なものは自分の身だ。わかるな?」 「うん……わかってる…。」 「…だから、」 まったく、汚れの無い兄を、汚してしまうかもしれない。 だけど、俺は続けた。……兄の、千華の為に。 「千華は…他の奴の事を気にしなくて良いんだ。」 「………、」 「それが例え、俺であっても。」 「…えっ!」 俺の名前が浮かび上がった途端、千華は大きな目を見開いて小さく叫んだ。 「やだっ、それは嫌っ!!」 「……お前な。」 「嫌!!稀華を気にしないなんて嫌!」 「………。」 顔を真っ赤にさせて「嫌」の一点張りの千華に、思わず笑みがこぼれた。 シリアスなこの状況で不謹慎かもしれないが、頬を膨らませる千華の顔が可笑しくて。 「わ、笑うなぁーっ!!僕真剣なんだからね!?」 「はははっ……千華、今の顔最高。もう一回。」 「ばばばっ、馬鹿にしてるでしょー!!?」 「何言ってんだよ。褒めてるんだぜ。」 「う、うわーっ!!!尚更悪いよっ!!」 そう言ってまた頬を膨らませる千華を見て、更に笑いが漏れる。 いつまで経っても変わらない兄に、笑い続けた。 願わくば、こんな時間がいつまでも続きますように。 |
| あとがき 現時点一番平和な主人公コンビです(…… この次から第二章に入り、殺し合いが始まる……予定です。 ううん、一番ラブラブしてて平和なこいつら本当に主人公なのか……。(爆 Back Next |