*Side-Misato&Tisato
柊智聡



「ちーちゃん♪」
「………、」
忌々しい声に、振り返る。
今回は内容が内容なだけに怒りが三割ほど増している。
「殺しますよ。」
「う、うわーっ!!??やーめーてー!!」
右手に持つ弓に力を込め、矢を取り出し攻撃準備。
するとお決まりのように死神……深聡はオーバーリアクションで怖がった。
そう言う反応するくらいなら、最初からしなきゃいいのに。
「今度その呼び方してみてください。本気で刺しますよ。」
「ごめんなさい。」
僕の声に、深聡は情けなく謝った。謝り続けた。
殆ど土下座している。……なんだかそこまで謝られるとかえって罪悪感。
…この人、本当に死神らしくない。

「大体なんでその呼び方知ってるんです?」
話題を変えるように、そう訊いてみた。
ちーちゃん……と言うのは、年少時代の僕の愛称だったものだ。
年少時代のあだ名なだけに、僕に似つかず可愛らしい。
今となってはかなり鳥肌ものな呼び方。
そんな呼び方をされたら、人間誰でも怒るもので。それは僕だって例外じゃない。
「いやさー、参加者の名簿作ってた時にさ。君に興味があったから
ちょっとだけ調べてみたんだよ。魔法でさ。」
「調べた…?」
「あっ!思いっきり顔を歪めないでよっ。調べたっつっても小さい頃の思い出くらいしか調べてないってっ!!」
「……本当ですね?」
「ははは、ハイ。」
少しばかり声の裏返る深聡を見て、僕は安堵のため息を吐いた。
余計な詮索されるのは嫌いなので、それくらいでよかった。
……それにしてもさっきから僕にへこへこするなんて、それほど僕怖いのだろうか。
「智聡くん、小さい頃は明るかったんだね〜。」
「……文句有りますか?」
「いいいえっ滅相もないですー!……でもさ。」
「…?」
にこー、と邪気のない笑みで、彼は続けた。
「あの時みたいに笑った方が可愛いのにな、って思って。」
「………っ」
彼があんまりにも笑顔で言うものだから、少しだけ動揺してしまって。
ふい、と思わず目線を逸らす。
「そんなもの、貴方に見せる義理はありませんっ。」
「あ、智聡くん可愛い♪もしかしなくても照れてるー?」
「……そんなにこの矢の餌食になりたいですか、そうですか。」
「うわああ!!僕が悪うござんしたッ!!!」
僕の言葉に、深聡は慌てて土下座した。
なんだか繰り返し土下座されると、ちょっとだけ偉くなった気分だ。えっへん。
……っ、何か僕……深聡に釣られて馬鹿になってきた……?
やばいやばい…。どうしたんだろう。前までこんなことなかったのに。
それに――
(知らず知らずの内に、彼に心を許しつつある自分が、いる。)
それが、一番解せなかった。
もう誰も信じないと誓った筈なのに。
「……智聡くん??」
「…ぁ…なんですか?」
不意に問いかけられて、僕はハッとして我に返った。
「いや、何か顔が暗かったからさー。どうしたの?」
「………、」
言われて、思わず沈黙した。
…そうだ、彼はあくまで、死神なのだ。
信頼しすぎて…裏切られるかもしれない。またあの頃のように。
「……僕は……」
「…うん??」


――ねぇ、深聡。
僕は、本当に貴方に心を許しても、大丈夫なんでしょうか……?



「…大丈夫。」
「…?」
「僕が、智聡くんを護るよ。それが、僕の役割。」
僕の不安を他所に、そう言って笑う深聡を見ると。
……騙されているかも、しれない。それでも……貴方の事を、信じれそうな気がしたんだ。


あとがき
ちーちゃんが徐々に深聡に心許していきます。
うーん!個人的には早くこのまま打ち解けてほしいものです。
まだ深聡を信じきれていない智聡は色々動かし難いので……。



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