| *Side-Hatori&Midori 綾瀬琶鳥 「おーいみどり!こっちだよ。」 「はぁっ、待ってよおにいちゃんー!」 いつも笑いながら俺の後を追っかけてきた双子の弟。 弟――美鳥は、俺にとってかけがえの無い家族だった。 もっともあの時はまだ幼すぎて、そんな事考えた事もなかったけど。 「……あれ?」 森の中を一緒に散歩している途中で、おかしな事に気づいた。 俺の家辺りだと思われる場所から、煙が出ていたんだ。 その時は二人とも気づいてなかったけど……あれは火事、だった。 「ぼく、いってくるね!」 「あっ、みどり!!」 煙が気になったのか、俺を置いて美鳥は家の方へと走り出した。 ――美鳥を行かせなければ、よかった。 次に俺の瞳に映った光景を見て、その時俺は後悔した。 焼かれた家。 確かにそこには俺と美鳥、それに母さんと父さんの家があった筈なのに、 消防車の消火活動によってプスプスと焦げたように黒い、建物の跡。 そして――その中で倒れている人がいた。 「おかあ……さん…?おとうさん………?」 「み、どり………。」 ……死んでいる。きっと突然の火事に逃げ切れなかったんだろう。 その事実を知っているのか否か、美鳥は目を大きくさせ、二人の亡骸をただ見つめていた。 「いいかい、お前たちは今日から私の奴隷ですからね。」 俺達を見下しながら、その人は鼻で笑った。 …こうして、両親と家を亡くした俺達は、新しい義母の家で過ごす事となったんだ。 御伽噺の継母なんかを思い出される。 俺達の新しい母は、そんな人だった。 そんな人の下で息子としてじゃなく、小間使いとして育てられた俺達だったが、ある日の事だった――。 (…美鳥?) 俺が服をたたんでいると、美鳥が神妙な顔で義母の部屋のドアをノックしたのが見えた。 「入っておいで。」 「……はい。」 (――ッ!?) その時、俺は目を疑った。 美鳥の右手には……ちいさな、でも俺達が料理でよく使う包丁が握られていた。 …何をするかは明確だった。 「なんだい美鳥。皿洗いは済んだのかいっ、終わったら洗濯物を頼んだだろう?そんな事も――」 「……黙れッ!!!」 「!?」 ドア越しで二人の会話を盗み聞きしていた俺は自分の耳を疑った。 聞こえてきたのは……怒りの感情が入れ混じったような美鳥の叫び声。 「お前だろ!!お前が殺したんだろ!!お前がお母さんとお父さんを焼いたんだろう!!?」 「な、何を訳のわからない事を――っ!!?」 「僕は見たんだッ!!お父さんとお母さんが病院に運ばれた後にライターを持ちながらほくそえむお前をッ!!」 「美鳥ッ!!??」 その会話に耐え切れず、俺はドアを荒立たせるとその場に割り込んだ。 このままではヤバイ。そんな気がして。 「――なんで、おにいちゃん……」 「琶鳥!!助けておくれ!この子が私にナイフをっ……!!」 「まだ言うかこの悪魔ッ!!お前さえ居なければ、お父さんとお母さんは!!」 「美鳥!!止めるんだ!!」 「どうしてッ!?全部、この人が悪いのに!!」 この人さえ死ねばいいのに!! そう叫ぶ美鳥には、殺気のこもったオーラのようなものまで感じた。 ……多分、美鳥の言うようにこの人が火を放ったのかもしれない。 前々から裕福な僕らの家庭を羨み、母さんと父さんを妬んでいたから。 でも…今ここで美鳥がこの人を殺したら、 ――かけがえの無い家族が……美鳥が、穢れてしまう。何もかも。 そう思ったから、俺は美鳥を抑えた。 「ご主人様!!」 「助けておくれ!!こ、この子が私にナイフを……!」 暫くすると義母の執事の人までやってきて、美鳥は取り押さえられた。 ……それからの記憶は、よく覚えていない。 忘れたのかもしれないし、思い出したくもないのかもしれない。 何故か俺だけは叔父の家に引き取られた。…美鳥をひとり、置いて。 残された美鳥がどんな生活を送ってきたかは、大体予想できる。 でも、どんなに喚こうと、どんなに我侭を言おうと、叔父は俺が屋敷に留まるのを許してはくれなかった。 ――あれから、8年も経った。 「さぁ着いたよ、琶鳥くん。」 「……はい。」 8年ぶりに戻った我が家。…いや、正確には違うけれど。 どうやら義母は亡くなったらしい。 病気だと叔父は言っていたが、俺は「美鳥がやったのでは」と心の奥底で思っていた。 それでも、確かに義母から虐待を受けていたらしい美鳥。 そして、一人逃げた俺。 ――美鳥は、俺を恨んでるだろうか。 今はただそれだけが不安だった。 「美鳥くん、こっちへいらっしゃい。」 「……?」 戸惑う俺をよそに、叔父は優しい声で屋敷のテラスで読書をしている少年に声を掛けた。 俺と姿がそっくりな少年――それは間違えなく、8年ぶりに再会する美鳥の姿だった。 (あ……。) その時、ふと視線が合った。 何か、言われるのではないか。そう覚悟した瞬間、少年は満面な笑みを浮かべた。 「お帰りなさい、お兄ちゃん。」 それは本当に満面な笑顔。 すぐ後でそれは猫かぶりだ、という事がわかったけれど。 ともかく――それが双子の弟との8年ぶりの再会だった。 「俺はお前を救えなかった………。」 「はぁ?何だよ唐突に。」 美鳥が見下したように俺を見る。 性格も大分変わってしまった弟。 だけど、『心』だけは前と変わっていないと俺でもわかるから。 ――神様、何で美鳥だけが辛い思いをしなくてはならないんですか。 傷ついていく弟とは裏腹に、何故俺はのうのうと生きなくてはならないんですか。 俺にも、等しい痛みをください。 『痛み』を望んだその刹那、黒い翼が見えた気がした。 |
| あとがき 小学生ペア。多分最年少?(時点主人公ペアかな。) 美鳥は本当は良い子なんです。 でも8年間大好きな(笑)琶鳥と離れて暮らしていた+継母の虐待でこんなにひねくれた子に。 この二人だとどっちが受けでどっちが攻めなのかいまだよく分かりません…。 個人的に寂しがりやな琶鳥受けが可愛いかなーとか(親馬鹿!/笑 Back Next |