*Side-Ibuki&Sibuki
白端飛沫




ひどく、気持ちが悪い。






「大丈夫だった?飛沫。」

耳に響く、兄の声。
兄は――息吹は、いつものように微笑みながら、俺に訊く。
…やめて……。
(その笑みを向けないで。)

「飛沫?」
いつものような、見慣れた息吹の笑顔。
だけど、いつもとは違う『何か』。
「撃たれた所……大丈夫だった??」
かすれただけだから、だいじょうぶ。
そう答えると、息吹は安心したようにまた笑った。

ひどく、気持ちが悪い。


兄の顔や服にこびり付く『赤』色。
それらからは、きつい匂いを発している。
その『赤』色は、紛れもなく――先ほど殺した眼鏡を掛けたセーラー服の少年の、血液。

ああ、


ひどく、気持ちが悪いんだ、息吹。


「……ねぇ、飛沫?」
何度も、何度も息吹に呼ばれているような気がする。
そのたびに、俺は曖昧に返しているような気がする。
もう何回、日常的な会話を装っているのだろうか。
だって、まさか、
(自分の兄が怖いなんて言えない。)


こんなにも返り血に染まりながらも、いつもの笑顔の飛沫が、
信じられないほど怖くて、
「……!!っ……かはぁっ……!!」
「飛沫…!?」
「げほっ……げほっ………、ぅ……っ。」
思わず倒れ、むせ返る。


気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い――。


先ほど撃たれた場所が。
目の前の、見たくもない現実が。
今の、変わってしまった息吹が。
それを、止めることのできない俺が。


「もう嫌だ、見たくない、何も、見たくないよっ!!」
「し、飛沫……?」
「なんでだよ!?なんで俺らこうなっちゃったんだ!?」
「ど、どうしたの飛沫?なにか、あったの?」
そう言いながら、心配そうに俺に手を伸ばそうとする息吹。
俺は、
「……し、ぶき…?」
「…あっ……」
なにもかもが、とにかく怖くて。見たくなくて。
あんなに大好きだった兄の手すらも、払いのけてしまった。
「どうして、飛沫……?」
「い、ぶき……。」
信じられない、と言うような絶望に満ちた息吹の、顔。



ごめん。



こんなんじゃ、ないのに。
本当は大好きだよ、息吹のこと。
でも。


「飛沫まで……僕を裏切るの……?」
俺の心は伝わらず、
俺は、ただ、

「違――違うよ…息吹!」

息吹に、もう誰も殺さないでほしい。
元の息吹に戻ってほしい。
ただそれだけなのに。






「……そんなの、許さない…。」
「息吹…っ!?」
不意に、息吹に押し倒される。
一見か細そうに見える兄の力は、思っていたよりもずうっと強くて、逃げられない。





――……ああ、そうだ。
思えば俺らは、昔からずうっと。

ずうっと、ずうっとすれ違い続けてきたんだ。







あとがき
うわーこっちはこっちでど修羅場ですねー!
息吹はすっかりおかしくなってます。そしてこいつ等はまたすれ違いが……!!(涙
この二人はお互いを想う気持ちがすれ違ってるだけなのでまたそこが書いてて切ないです…。


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