| *Side-Misato&Tisato 柊智聡 『智聡くんはあの二人をやってきてくれないか?』 『分かりました……けど…深聡は?』 『僕にはちょっとヤボ用があってね。』 『………、』 『あはは、なーにすぐ帰るよ♪…ごめんね。二人が相手だと言うのに、一人にさせるなんて。』 『……深聡…。』 『…願わくば、君に死神の加護があらんことを。』 それが、数分前までの会話、だった。 深聡は僕に千華くんと稀華くんの相手を任せ、どこかへ行ってしまった。 ……『裏切り』。 僕の脳内に、そんな言葉がよぎった。 …少し前までの僕なら、そう疑っていたのだろう。 でも――……。 (…深聡なら、だいじょうぶ。きっと――ううん、絶対。) 今までなんども、疑ったことはあった。 だけど…僕は…今ならあの人の事を、誰よりも信用できる。 きっと、僕を全身全霊で護ってくれるだろうから。 (だから――。) 僕は支給武器である弓矢を握り締めると、歩き出した。 千華くんと稀華くんの眠る、部屋へと。 僕は、今から、彼らを殺す。 静かに、足音を殺し、息を潜めながら彼らの部屋に入り込む。 二人は静かに眠っていた。それは、僕らを信用している証。 ……ちくり、と胸が痛む。…だけど。 (僕が望むのは――…そう。平和、なんかじゃない。) こんな世界、いっそなくなった方がマシだ。 …そう、あの時望んだこと、決して嘘ではない。 僕はこの殺し合いに巻き込まれて、色んな人を見てきた。 互いを護ろうと、小さながらに戦いを挑んできた黒髪の二人の少年。 平和を望み、協力を求めてきた茶髪の二人の少年。 そして、 (……深聡…。) 僕に危害を加えようとする人、 僕に協力を求めてきた人、 僕を、愛してくれている人。 どれも、この殺し合いが始まらなければきっと、会うことはなかったと思う。 僕を信じて、声を掛けてくれた千華くんと稀華くんの言葉に心動かされかけた事も嘘ではない。 (だけど――。) きつく閉じていた瞳を、キッと見開き眠る二人に矢を向ける。 ――ありがとう、千華くん、稀華くん。 こんな醜い僕を一時でも信じてくれて。 そして――ごめんなさい。 裏切ったらどう、と言っていた相手が裏切るなんて、君達は想像したかな。 「……さようなら。」 そんな事を考えながら、矢を引いた。矢先はしっかり千華くんを狙っている。 そして、そのまま彼を射抜く。……そう、思っていたのに。 「千華ッ!!!」 「!?」 予想外の声に僕はびっくりして、声の先を見た。 見ると――稀華くんが。 「え――稀華!?なに…が起こって――……。」 すやすやと寝ていた彼の耳元に、大声が飛び込んできたからだろう。 千華くんは驚いたような顔をして稀華くんを見つめていた。 「…ど、うして…。」 僕は思わず呟いた。 絶対に、殺せると…思っていたのに。 稀華くんは…千華くんの体を抱きしめ回りこむると矢を避けた。 …稀華くんは寝たフリをして起きていたのだろう。千華くんを助けると、僕を睨みつけた。 「どうして、だと?それはこっちの台詞だ。」 「……。」 「…何のつもりだ、柊智聡ッ!!」 カッと目を見開くと彼は叫ぶ。血の繋がる兄を殺そうとしていたのが許せないのだろう。 少しだけ心が揺らぐのを堪えながら、僕は表情を変えずにまた弓を構えた。 「見てのとおりです。」 「……!」 「裏切り者だと嘲笑ってくださっても構いませんよ。…僕は、最初からこうする気でしたから。」 「てめっ……!千華の思いをよくも……!!」 「き、稀華……!?智聡…お兄ちゃんも……!!なんで…!?」 怒り狂う弟と、事態の飲み込めない兄。 そして、心を押し殺しながらもあくまで彼らを殺そうとする僕。 二対一じゃ分が悪いかな…なんて思っていたけれど。 「この様子じゃ……フェアな殺し合いができそうですね。」 「…ッ!!」 言うと、僕は今度は千華くんよりも戦力のありそうな稀華くん目掛けて矢を放つ。 しかし、同じ遠距離武器と言っても、銃とは違い矢は近距離にいれば避けることが簡単なのだろう。 稀華くんは容易い、といわんばかりにそれを避けると、銃を僕に向かって構えた。 (くそっ……コレじゃ、僕が殺される……っ) 弓矢じゃ本数に限りがあるのと、勝ち目はないと判断した僕は、敢て矢をしまうと足を思い切り振り上げた。 「がっ……!!」 「き、稀華ぁっ!!」 僕の足は思い切り稀華くんの腹に捻りこみ、彼は吹き飛んだ。 それだけじゃ見逃さず、拳をも振るう。攻撃の効いた彼は避けることもできず、ただ僕の攻撃を受けていた。 「……こう見えても、中学時代は柔道部…でしたから。」 やはり、弓矢は離れて攻撃した方が良い。 そう判断した僕は言いながら、弓矢を使う為に稀華くんの身体から離れる。 突き飛ばされた拍子に、何処かへ飛んでしまったのだろう。 彼の手元に銃はもう無い。これで稀華くんを殺すのは容易くなった。 「……んのっ…!」 「…っ?」 幼い、高い声が耳元で響く。それは稀華くんのものではない。 瞬間にたたきつけられる何か。…生憎だが、痛みはまるでない。 其れは……今、明らかに場違いな物だった。 「け…けん玉でも……当たると痛いんだから……っ!!」 「――……、」 振り返るとそこには、滑稽な武器(?)を持った千華くんがいた。 少しだけ驚いた。先ほどの彼は、僕を攻撃するなんて様子はなかったから。 やはり弟を傷つけられたのが頭にきたのだろう。後先考えずに馬鹿みたいなおもちゃを僕に向ける。 その様子に、ひどく哀れになった。 「……馬鹿な子ですね、千華くん。」 「…っ!」 「そのまま、傍観してくれればいいものを。」 言いながら僕は弓を取り出す。千華くんの顔に緊張が走った。 「そうしたら――君は死なずに済んだかもしれないのに。」 「そんな弓矢なんて……近距離じゃ使えるわけないっ!」 強気な態度で、千華くんは言葉を返す。 さっきの僕と稀華くんの戦いをこの目で見ているからだろう。 ……でも、所詮は子供。思考パターンは単純なものだった。 「矢は別に、」 「えッ――!!」 「――……引く以外にも使い道はありますよ?」 「あッ……!!っくぅっ……!!!」 「千華ッ!!!」 言いながら、僕はあえて弓を引かずに、そのまま矢を彼の身体を刺した。 急所は外したけれど、千華くんは痛みに耐え切れずに叫んだ。 刺すだけじゃなく、彼の身体に食い込むように深く捻ったからだろう。悲痛な声は止まらない。 「この……野郎ッ!!!」 「えっ……、」 稀華くんの声が聞こえ、避けようとしたけれど――遅かった。 「……っく…!」 肩に鋭い痛みが走る。 振り向くと、それまで後ろで倒れていた稀華くんが引き金を引いていた。 いつの間に――…立てなくなるようにはした筈なんだけれど。…愛の奇跡、とでも言うんだろうか。 「千華!!こっちだっ!!」 「――稀華……。」 武器が手元に戻った彼には僕を殺すと言う選択肢があるはずなのに。 敢て彼はそれを選ばずに、千華くんの元へ駆け寄ると手を引くと千華くんを抱きかかえ、僕から逃げた。 きっと、僕よりも兄の手当てが先だ、と判断した為だろう。 ……そして、僕は…。 「くっ……。」 彼らを追いかけることなく、その場にへなへなと座り込んだ。 …肩が、凄く痛い。それはまるで閃光のように。 こんなかすり傷、なんて。この世界の滅びを考えたあの時から、覚悟していた事だ。 こんなかすり傷で怯むほど、僕は弱くなんて、ない。 そう思う……けれど。 「………、」 痛みが始まると、悲しくなる。 悲しくなると、さびしくなる。 こんな時、僕は一人で。 「…み……さとぉ……。」 ――…ごめんなさい、深聡。 貴方が見ればきっと、こんなの困ってしまいますよね。 だけど…貴方がいない今、とてもとても、心細いと感じてしまうんだ。 ああ、貴方は今……どこで何をしているんでしょうか。 |
| あとがき わー!互いが互いが傷つけあうフェアな殺し合いって始めてかも……? 前までは一方的に傷つけるのが多かったからなぁ…。 そしてけん玉で頑張る千華…。(爆 Back Next |