*Side-Misato&Tisato
柊智聡




そこは、薄汚い世界。
何よりも大切なものは自分で、他人のことなどどうでもよく、
金と権力、地位と名誉、そして悦楽が何よりの遊び。
愛だの恋だのそんな物等所詮、奇麗事でしかなく、

それでも僕は貴方を信じていたんです。
貴方こそはそんな汚い世界でたった一人、僕を愛してくださる方だと、
それなのに―――



暗くて、ジメジメとした部屋で僕は監禁されていた。
ああ、また。

もう身体を動かす事すら出来ない。
五感は正常なんだろうが、非常にだるい。
何をする気も起きない。
今日で何度目だろう。こんな事になってから何日が経っただろうか。
(っ……!!)
不意に髪を思い切り掴まれた。
痛い、と思うが声すら出なかった。

「げっへっへぇ、お前みたいな奴でも抱いてやるって言うんだ!ありがたく思うんだな!」
とても下品な笑い方。
……新しい、人だ。
昨日とはまた違う人。

…そうだ、先輩は?
先輩――、タスケテ―――………
天に助けを乞おうとした刹那、新たな声が響いた。

「智聡くん、気分はどうかな?」
(え………っ)
それは、確かに僕が助けを求めた相手の声で。
だけど様子が違った。僕にかける筈の言葉の一言が違った。




先輩……どうして―――………。





また悪夢の宴が終わる。
裏切られた、と発覚したのは宴が終わってから暫く経ってからだった。
何の反応もなくなった僕につまらなくなったのか、奴等は僕を何事もなかったかのように、
雨の降り注ぐ夜の空き地に置き捨てた。
つまり、もう帰っていいぞ。と言う事か。
『先ほどの出来事は悪夢だったんだ』と。だから『お前はいつもどおりの生活を送れ』と言うんですね。
(…でしたら、僕も貴方たちの希望通り『日常』を送ってさしあげましょう。)

そう思い、立ち上がって家に帰ろうとしたが……
「痛っ……」
何日間も休みなく犯され続けたその身体が上手く動ける訳もなく、
結局僕はその空き地で倒れていた。
…誰かがきっと、見つけてくれるだろう。
だから今日は、このまま。
聞こえてくるのは、ただ雨の音だけ。

(……気持ち悪い。)
途端に吐き気がこみ上げてきた。
続けざまに犯されたのもあるが、雨に当たって風邪を引いたのかもしれない。
こうして見ると、世界なんて本当にちっぽけで。
自分が今、死んでしまっても誰も悲しむことはないだろう。
……いや、その前に気づかれる事もないかもしれない。
所詮、ちっぽけな世界で僕もまたちっぽけな存在なのだから。


「こんな世界、いっそなくなった方がマシだ。」
消え入るように、ただ一言だけ呟く。
……いや、世界が滅びる前に自分さえ滅びればいいのかもしれない。
つまりは、『自殺』と言う道を。
だけど僕は、弱いから。
死にたくても、怖くて死ねないほど、勇気がないから。





「こんな世界、いっそなくなった方がマシだ。」
怒りと悲しみを含みながら、もう一度呟く。
その瞬間、背後に気配を感じた。

黒い翼が一、二枚舞い降りる。
カラスかと思ったが、『其れ』は口を開いた。
「……君の願いを、かなえてあげよう。」
「だれ―――っ」
驚いて振り返ると、そこにはもう誰もいなく、
その代わりまばゆい光が僕を包んでいた。

「貴方は、一体………。」
見えない相手に返事も来るはずもないと思いつつ訊く。
すると、返事は程なくして返ってきた。
「僕は『死神』…闇に魅入られた者達を見つける為に下界にやってきた死神さ。」

死神……?
何を馬鹿な事を言ってるんだ。そんな空想――。
そんな風に思うが、この光は普通ではない事が現実を示している。
「何を――。」
何をする気なんだ、と言い終える前には意識が途切れていた。
最後に見たのは、僕とおんなじ顔をした、見知らぬ人間――。


あとがき
インヴェンションに登場したのは訳有りペアの弟、智聡でした。
血の繋がらないけど双子設定の二人。こ、こいつら双子キャラを馬鹿にしてるな…!(爆笑
深聡は書いてても謎。あー早く智聡くんと打ち解けてほしいものです。明るくない深聡は動かし難い…!!



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